自宅を売却!確定申告時期と受けられる特例は?

自宅を売却した時に「確定申告が必要」ということは分かるものの、マイホームの売却は、生涯のうちに1回や2回あるかないか。という話ですし、実際に、「いつ申告をすれば良いのか?」「申告するメリット(受けられる特例)にはどんなものがあるのか?」よくわからないですよね。

そこで、今回は自宅を売却したときの確定申告の時期や受けられる特例について、記したいと思います。自宅を売却された方は、是非チェックしてみてください。

確定申告はいつするの?

意外と多いのはこの疑問。

不動産の売買契約は、契約日と引渡し日(決済日)を別日で設定するケースが多くあります。売主は契約をした後に、物件を引き渡すために確定測量を行ったり、引っ越しをし、これらが一通り完了してから引渡し(決済)となります。

一般的には契約日に、買主から手付金(例:売買代金の10%)を受取り、引渡し日に残代金(例:売買代金の90%)を受け取ることになり、2回に渡ってお金を受け取ることになります。

契約日と引渡し日が年をまたぐ場合

「契約日と引渡しが年をまたぐ(例えば2020年の12月に売買契約をして手付金を受取り、翌年2021年の2月に引渡しをする)場合、

「受領した手付金について確定申告をする必要はあるの?」

といった疑問が生じてきますね。

結論としては、手付金について2020年分として確定申告をする必要はありません。

翌年の2021年に手付金を含めた売買金額全部を申告します。

ポイント!

確定申告は ”引渡し日の属する年を基準” に行なう!

※厳密には売買契約日を基準として確定申告を行なうこともできますが、あまり一般的ではないため説明は割愛します。

自宅の売却時にかかる税金は?

自宅を売却したときにかかる税金は「不動産譲渡所得」にかかる「所得税」と「住民税」です。

「不動産譲渡所得」にかかる税金は、その売却した不動産の保有期間によって税率が変わります!

保有期間が5年超か、5年以下かによって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」かが分かれ

税率は約2倍も変わってきます。

自宅を売却するときは、引渡し時期を考えるといいですね。

保有期間の考え方

注意したい点ですが、保有期間は売却した年の1月1日を基準に判断されるということです。

売却した年の1月1日時点で、不動産を取得してから保有期間が何年何ヵ月何日が経過しているか?で判断されます。

【例】取得日が2015年6月30日、譲渡日が2020年7月2日の場合・・・

※実際の保有期間は5年を超えますが、保有期間は4年半の判断になってしまいます。

【例】取得日が2014年12月31日、譲渡日が2020年1月2日の場合・・・

※保有期間は5年超と判断されます。

「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の税率

「短期譲渡所得」の税率は39%(所得税30%、住民税9%)。

「長期譲渡所得」の税率は20%(所得税15%、住民税5%)になります。

また、2037年までは、所得税額に別途2.1%の復興特別所得税がかかるため、 これを含めた税率は、

「短期譲渡所得」の税率は39.63%

「長期譲渡所得」の税率は20.315%

となります。

短期譲渡所得
(保有期間5年以下)
税率
39.63%
長期譲渡所得
(保有期間5年超)
税率
20.315%

※表の税率は復興特別所得税分も含みます。

意外?!自宅を売却した場合、税金がかからない場合が多い

自宅を売却した場合、(資産家の方を除けば)不動産譲渡所得にかかる税金はかからない場合が結構多いんです!

不動産譲渡”所得”に課される税金ですので、大雑把に言いますと、買ったときの値段よりも売った時の値段の方が低ければ

(損失があれば) 不動産譲渡所得に関して税金は発生しません。

さらに!

もし譲渡益が出た場合であっても、自宅を売却する場合は、2つの特例(自宅を売却して譲渡益が発生!受けられる特例は?を参照)を利用できます。

この特例によって、不動産譲渡に伴う税金がかからなくなるケースが多くあります。

では、不動産譲渡所得の計算方法について説明します。

●譲渡所得の計算式

譲渡所得=①譲渡金額-(②取得費+③譲渡費用)

①譲渡金額
売却金額との理解でOKです。

②取得費
売却した土地や建物を購入したときの費用(購入代金やそれに付随する仲介手数料等)です。

建物については経年による減価償却費相当額を控除して評価します(建物の取得費の計算については、以下の国税庁ホームページをご参照ください)。

確定申告を行なう際は、売却した土地や建物の売買契約書や建築工事請負契約書及びその領収書を用意しましょう。

もし、契約書や領収書が残っていない場合、譲渡金額の5%相当額を取得費として計算することとなります(正直売買金額のわずか5%ではとても低いです・・・)。

実は、この件での失敗事例が結構多いんです。

親から相続した土地や建物を自宅としていた場合「引越しや建て替えの時に契約書と領収書を紛失してしまった…」というケースです。

取得時の契約書や領収書が残っていれば譲渡損失が発生し、税金が課されなかったのに、それが無いがために

取得費がわずか5%しか認められず、税金が発生してしまった。。。となってしまいます。

所有する土地と建物の契約書と領収書はお金と同じ。本記事をきっかけに探されて大切に保管しておくことをお勧めします。

参考!~国税庁ホームページ~

No.3261 建物の取得費の計算

③譲渡費用
売買仲介手数料、売買契約書の収入印紙代、不動産を売るために直接要した費用(測量費等)、

その他、解体更地として土地を売ったときはその解体費用などが該当します。

ただ、ローンがある物件を売る場合で、抵当権を抹消するために要した登記費用については、譲渡費用にならないと解されています。

自宅を売却して譲渡益が発生!その時に受けられる特例とは?

自宅を売却して譲渡益が発生した場合、主に「3,000万円の特別控除の特例」と「軽減税率の特例」が受けられます。

3,000万円の特別控除の特例

売却不動産の保有期間(長期譲渡所得又は短期譲渡所得)に関わらず、一定の要件を満たしていれば、譲渡所得(譲渡益)から最高3,000万円を控除することができます。

課税譲渡所得金額
=譲渡所得(※1)-特別控除(3,000万円 ※2)

(※1)譲渡所得:譲渡金額-(取得費+譲渡費用)
(※2)特別控除:3,000万円(譲渡所得が3,000万円に満たない場合、譲渡所得の金額が限度になります)

この3,000万円の特別控除を受ける場合は、自分が住んでいた自宅であったこと(住民票があり、生活の実態があったこと)や、

住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること等、 適用をうけるためには要件を満たしている必要があります。

詳細については、参考に国税庁ホームページのリンクを貼っておきますので参考にしてみてください。

参考!~国税庁ホームページ~

No.3302 マイホームを売ったときの特例

保有期間が10年を超える居住用財産を売却した場合(軽減税率の特例)

保有期間が10年を超える居住用財産(自宅)を売却する場合、一般的な長期譲渡所得の税率より、更に税率が低くなる特例です。

この特例により、譲渡所得が6,000万円以下の部分の税率は14%(所得税10%、住民税4%)、6,000万円超の部分は20%(所得税15%、住民税5%)となります。

また、2037年までは、所得税額に別途2.1%の復興特別所得税がかかるため、 これを含めた税率は、 「6,000万円以下の部分」の税率は14.21%、「6,000万円超の部分」の税率は20.315%となります。

軽減税率の特例による税率 (保有期間10年超の居住用財産)

譲渡所得税 率
6,000万円以下部分14.21%
6,000万円超部分20.315%

※表の税率は復興特別所得税分も含みます。

「3,000万円の特別控除の特例」と「軽減税率の特例」の併用で税軽減効果をUP!

「3,000万円の特別控除の特例」と「軽減税率の特例」は重複して適用することができ、

不動産譲渡所得税の売却にかかる税金の軽減効果がUPします!

■具体例

保有期間:25年
譲渡金額:1億5,000万円
取得費・譲渡費用:3,000万円

①譲渡所得(譲渡益)を計算
 1億5,000万円-3,000万円=1億2,000万円

②課税譲渡所得を計算
 ①の譲渡所得から3,000万円の特別控除
 1億2,000万円-3,000万円=9,000万円

③軽減税率(6,000万円以下の税額を計算)
 6,000万円×14.21%=852万6,000円

④軽減税率(6,000万円超の税額を計算)
 (9,000万円-6,000万円)×20.315%=609万4,500円

⑤税額合計
 ③+④
 852万6,000円+609万4,500円=1,462万500円

ということで、今回は自宅を売却した時の確定申告の時期と受けられる特例についてご紹介しました。

今回のテーマではありませんが、住宅ローンを新たに組んで自宅買い替えるときは、また別の特例があります。

(※買い替えの場合、今回紹介しました3,000万円の特別控除と、住宅ローン控除は原則併用できないので、どちらを選択するかしっかり考える必要があります)

以上、本記事が皆さんの生活のヒントになれば幸いです。ではまた。