PCBとは?PCB廃棄物を把握して適切に処理しましょう!【古い店舗や工場をご所有の方は要確認】

今回は「PCB」についてお話ししたいと思います。「PCB」とは、普段生活をする中では聞き慣れない言葉だと思いますが、古い店舗や工場を所有している不動産オーナーの方にはとても身近なものです。

「PCB」は、現在では生産や輸入が禁止されている有害の廃棄物で、その保管と処理については法律に従って対応する事が求められます。

特に1990年(平成2年)以前に建築された、古い店舗や工場の不動産オーナーの方はご所有不動産の「PCB」の確認と把握が必須の項目と言えますので、本記事を良い機会に、是非確認してみてください。

PCBとは

PCB(Poly Chlorinated Biphenyl/ポリ塩化ビフェニル)とは、水に溶けにくい、燃えにくい(不燃性が高い)、電気を通しにくい(絶縁性が高い)特徴をもった、人工的に製造された油状の化学物質です。

1953年(昭和28年)から1972年(昭和47年)に国内製造された変圧器(トランス)蓄電器(コンデンサ)、1957年(昭和32年)1月から1972年(昭和47年)8月に国内製造された照明機器の安定器に使用されています。現在では国内での生産や輸入が禁止されています。

チェックすべきPCB廃棄物【蛍光灯の安定器・変圧器(トランス)・蓄電器(コンデンサ)】

STEP1】メーカーと型番を調査する

実際に設備機器に貼られている型番シール等を調査します。不動産の現場では、年代が古い場合埃がかぶっており、確認が困難な場合も多々あります。

埃を拭き取り、視線の角度を変えたりしながら根気よく確認すれば意外と判るものです。これらの機器が稼働中の場合は高電圧ですので、絶対に近づいての調査はNGです。

※稼働中の設備機器についてPCBの調査をしたい場合は、 高圧受電設備について法定点検の依頼先(電気保安協会等)の担当の「電気保安技術者」に聞いてみると良いでしょう。

これは、私が実際に不動産の現場で確認したものの一例です。このように錆等が発生していて解読が難しいケースが多いですが、丁寧に埃を払い根気よく確認すれば大体判別できます。

【STEP2】型番からインターネットで製造年代とPCB含有可能性を調査する

STEP1で型番が判ったら、Googleなどのインターネット検索サイトで「メーカー名 型番 PCB」と入力してみてください。

現在、各メーカーはPCBに関する特設ページを設けていますので、1番早くそのページにアクセスできるはずです。

【STEP3】絶縁油の採取調査依頼をする

STEP2で、PCBが含有されている可能性があり(調査の必要性あり)となった場合には、油の採取調査の依頼をします。

調査は、稼働中の変圧器(トランス)や蓄電器(コンデンサ)から採取する事ができませんので、稼働が停止してから行います。依頼先については様々な業者がありますが、建物解体業者さんか、廃棄物処理事業者さんであれば、ほとんどの場合対応してもらえます。

調査の結果、PCB廃棄物があることが判明した場合は、次の処理が必要になります。

PCB廃棄物があった場合の処理

PCB廃棄物保管の届出をする

PCB調査の結果、PCBの含有があった場合は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)及び廃棄物処理法に基づく届出と、適切な保管が義務付けられています。

届出方法等については、調査結果と共に案内が同封されてくるケースが殆どですが、詳細を知りたい場合には『環境省 ポリ塩化ビフェニル(PCB)早期処理情報サイトお問い合わせ窓口一覧』が参考になります。地域によって処理期日なども異なりますので、それぞれの対象地域へ問い合わせるのが確実です。

「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」の分類

PCB廃棄物は、PCBの含有濃度によって「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」の2つに分類され、それぞれに処理の方法が定められています。
元来「低濃度PCB廃棄物」は定義(想定)されていませんでした。PCBの使用が禁止された1972年(昭和47年)よりも後に製造されたはずの変圧器(トランス)や蓄電器(コンデンサ)からも微量のPCBの含有が発見されたことから「低濃度PCB廃棄物」の分類が生まれました。
PCBの使用が禁止された後にに製造された設備になぜPCBが混入したのかは明らかになっていませんが、製造時やメンテナンス時に使用していた再生油にPCBが混入していたためではないかと考えられています。

●低濃度PCB廃棄物の定義
【不燃性のもの(金属やガラス等)】
PCBの濃度が0.5㎎/㎏超5,000㎎/㎏以下のPCB含有廃棄物。
絶縁油を含む電気機器等のうち、微量のPCB(数㎎/㎏~数十㎎/㎏程度) に汚染されたもの。
【可燃性のもの(木くずや紙くず等)】
PCB濃度が0.5㎎/㎏超100,000㎎/㎏以下のPCB含有廃棄物。

期限内に処理をする

※現在、環境省が高濃度のポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む廃棄物の、全国5カ所の施設の処理期限について、最大2年延長する方針が発表されています。詳細が決まり次第リライトいたします(2021年9月時点)。

PCB廃棄物には、処理期日が設定されています。低濃度廃棄物の処理期日は2027年3月末で全国一律ですが、高濃度PCB廃棄物の処理期日については、地域によって異なります。高濃度PCB廃棄物の処理期日については以下の図を参考にしてみてください。

PCB廃棄物の処理先

CB廃棄物の処理先は、「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」で異なります。

「高濃度PCB廃棄物」の処理は中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)です。

「低濃度PCB廃棄物」の処理は、環境大臣が認定する無害化処理認定事業者及び、都道府県知事等から処分業の許可を得た事業者が行います。「低濃度PCB廃棄物」の処理事業者については、こちらが参考になります。

このように、「高濃度PCB廃棄物」か「低濃度PCB廃棄物」かによって、処理の依頼先が異なりますので注意しましょう。

【高濃度PCB廃棄物】【低濃度PCB廃棄物】
中間貯蔵・環境安全事業
株式会社(JESCO)
・無害化処理認定施設
・都道府県知事等許可施設

高濃度PCB廃棄物の処理に関する補助金等【中小企業者等軽減制度】

PCB廃棄物が自分の保有する不動産にあった場合、PCB廃棄物の処理費用の目安は「3万円/㎏」であり、とても高額です。

変圧器(トランス)や蓄電器(コンデンサ)は、100㎏を超えるケースはざらであり、処理には数百万円~数千万円かかる場合があります。

事業者の方にとっては、処理期日が迫る中、予期せぬ費用負担を迫られることにもなるため、不安が大きいと思います。しかし、こうした不安に応える費用負担の軽減制度がありますので、内容を確認して安心につなげてください。

中小企業者の方に限定はされますが「高濃度PCB廃棄物」を処理する場合にその処理費用が軽減される措置があります。一定の条件をクリアした法人の場合は70%、個人の場合は95%が軽減されます。詳細は「JESCOの中小企業者等軽減制度の概要」が参考になりますので、是非ご確認ください。

「低濃度PCB廃棄物」に関する補助金については、一部の自治体が個別に補助制度を設けているケースもありますが、補助制度を設けていない自治体も多いのが現状です。「低濃度PCB廃棄物」については、処理の手続きを行う前に、各自治体に補助金制度の有無について確認するとよいでしょう。

PCB廃棄物がある不動産の売買【PCB廃棄物は譲渡対象から除外】

PCB 保管事業者は、上記の処理義務に加えて、処理までの間、適切に PCB 廃棄物を保管することが義務付けら れ、第三者に譲渡することも原則として禁止されています。
「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」は、PCB 廃棄物の譲渡を原則として禁止(法17条、33条2号)しており、PCB 廃棄物を譲渡しまたは譲り受けた者 は、3 年以下の懲役もしくは 1000 万円以下の罰金、またはこれを併科するものとされています。

そのため、PCB 廃棄物が所在する不動産を譲渡する場合には、当該 PCB 廃棄物については譲渡の対象から外す必要があります ので、注意が必要です。
特に大規模な商業施設や工場の場合、不動産オーナーやその建物の管理会社もPCB廃棄物の存在を見落としてしまっているケースも想定されます。そのため、不動産の売買契約を行う際は、引渡し日以降であっても、新たにPCB廃棄物が発見された場合には、PCB特措法や廃棄物処理法に則り適切に処理するものとする。等といった特約を付すことが大切です。

PCBの有毒性【カネミ油症事件と適切な処理の重要性】

PCBの有毒性が明らかになったのは、1968年の痛ましい事件「カネミ油症事件」です。

北九州地方をを中心に発生した事件で、カネミ倉庫社製の食用ライスオイル(米ぬか油)中に、PCBやダイオキシンが混入し、それを食べた方々に深刻な健康被害をもたらした事件です。ライスオイルを製造する工程の中で、ライスオイルの中にPCB(ポリ塩化ビフェニル)や、PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)等が混入してしまいました。

このライスオイルを知らずに口にした人たちから、ひどい吹出物や、手足の痺れ、強い倦怠感、爪の変形、食欲不振の他、様々な症状が確認され、事件が発覚しました。現在でも、この事件の後遺症に苦しんでいらっしゃる方々がいらっしゃいます。

また、PCB廃棄物は、自然界で分解されにくく、生物の体内で濃縮しやすい特徴があります。そのため、PCB廃棄物が適切に処理されず川や海などに不法廃棄されてしまうと、食物連鎖によりPCBが生物の体内に濃縮し、非常に広範囲での汚染につながってしまいます。

実際に、海洋生物の体内から濃縮したPCBが発見された実例もあり、私たちの身近な環境問題の一つになっています。私たちは、こうしたPCBの有毒性を理解の上、適切に処理する事が求められています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。少しでも皆様のお役に立つ情報でしたら嬉しいです!では。