慌てない相続手続き④-1 相続発生から2週間~3ヵ月以内に行うべき相続手続き ~相続手続きを自分でやれるように準備しておこう~

慌ただしく葬儀や法的手続きがひと段落した相続の発生から2週間〜3ヵ月以内に行う相続手続きは、①法定相続人確定に必要となる書類を取得する作業と、②亡くなった方の相続財産を漏れなく把握する作業がとても大切になります。

今回はこのうち、① 法定相続人確定に必要となる書類を取得する具体的な方法について紹介します。

まずは法定相続人の範囲と順位を知る

被相続人の法定相続人は、その範囲と相続順位、相続割合が法律で決まっています。

被相続人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の相続人は以下の順位で配偶者と一緒に相続人となります。

子→父母→兄弟姉妹の順番で、配偶者と一緒に法定相続人になることができます。

■相続順位と配偶者との法定相続割合
順位被相続人との続柄配偶者との法定相続割合
第一順位【直系卑属】被相続人の子
(子が亡くなっている場合は孫、孫が亡くなっている時はひ孫)。
配偶者が1/2、第一順位の全員で1/2
第二順位【直系尊属】被相続人の父母
(父母が亡くなっている場合は祖父母)。

※第一順位の相続人が居ない時に相続人になります。
配偶者が2/3、第二順位の全員で1/3
第三順位【傍系血族】被相続人の兄弟姉妹
(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子である甥・姪)。

※第一順位の相続人も第二順位の相続人も居ない時に相続人になります。
配偶者が3/4、第三順位の全員で1/4

相続手続き(法定相続人確定)に必要となる書類を取得する

1.被相続人の戸籍謄本を取得しよう

法定相続人を確定するために、被相続人(亡くなった方)が出生してから亡くなるまでの戸籍を集めます。

戸籍謄本には、被相続人の親や配偶者、子の記録がされていますので、法定相続人を証明するために利用できます。

その他、相続登記を始め、各種相続に伴う名義変更等にも利用します。

この戸籍を取得する段階でごく稀にですが、残された相続人が知らない養子や隠し子(再婚歴がある方は前配偶者との間の子等)の存在を初めて知ることになる、といったケースが実務の世界ではあります。

「相続人は自分たちだけ!」と思い込まず、先ずは早い段階で被相続人の戸籍謄本を取得しましょう。

被相続人の戸籍謄本の取得方法は以下の3ステップで行います!

【ステップ①】被相続人の本籍地を確認する

被相続人の戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場でしか取得ができません。

そのため、先ずは被相続人の本籍地のある市区町村を確認する必要があります。

被相続人の ”住民票があった市区町村” と ”本籍地の市区町村” は必ずしも同じとは限りません。

被相続人の本籍地を確認するためには、被相続人が亡くなった時に住民票があった市区町村役場で「本籍地の記載がある住民票を取得」することで、被相続人の本籍地を確認することができます。

【ステップ②】被相続人の本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得する

被相続人の本籍地が判ったら、被相続人の本籍地のある市区町村役場で戸籍謄本(現戸籍謄本といいます)を取得します。

市区町村役場の窓口では「相続のために戸籍を取得したい旨」を伝えれば、概ね対応してもらえます。

担当部課は、住民課や戸籍課といった名称のケースが多いです。

【ステップ③】被相続人の現戸籍謄本を基に過去に遡って取得していく

被相続人の出生から亡くなるまで、同じ市区町村に本籍を置いていた場合は、一つの市区町村役場で全ての戸籍謄本の取得ができるのですが、現実ではこのようなケースは少なく、結婚や引越しで本籍を2〜3回は異動しているケースが殆どです。

この場合、被相続人の本籍地の異動を遡って確認し、出生から亡くなるまでの戸籍謄本を繋げて確認できるようにする必要があります。

例えば、被相続人が亡くなった時の本籍地が「A市」にあり、その前の本籍地が「B市」、さらにその前が「C市」であった場合、「B市」と「C市」からも被相続人の戸籍(除籍謄本と改製原戸籍謄本)を取得する必要があります。

戸籍を遡って確認するには、亡くなった時の現戸籍に「従前戸籍」が記載された欄を確認します。そこを手掛かりに遡って確認していきます。

先の例で言うと、従前戸籍が「B市」であった場合は「B市」から戸籍謄本を取得し、また「従前戸籍」を確認します。

これを被相続人が出生した時点の戸籍謄本に辿り着くまで繰り返すことで、被相続人の戸籍謄本を1つに繋げることができます。

被相続人の戸籍謄本は郵送でも取得できる!

被相続人の本籍地が出生から亡くなるまで一つの市区町村、若しくは近隣他府県であれば市区町村役場に直接出向いて戸籍謄本を取得する事も選択肢の一つではありますが、被相続人が転籍を繰り返している場合には、各市区町村役場に郵送で戸籍謄本を取得することも可能です。
戸籍謄本を郵送で取寄せる場合、各市区町村役場で求められる必要書類が異なりますので、予め市町村役場に電話で確認すると良いでしょう!
被相続人の戸籍謄本を請求する際、請求者本人(相続人)と被相続人の関係を証明するための戸籍謄本の写しが求められるケースが殆どですので、予め複数用意しておくことをお勧めします。
また、各市区町村役場への被相続人の戸籍謄本の発行費用の支払い方法としては、定額小為替証書や市区町村役場が発行する振込用紙で支払うケースが殆どです。返信用封筒や郵送料等の費用の負担も必要になりますので、その点腹積もりしておきましょう!

2.法定相続人の戸籍謄本を取得しよう

被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本の取得が完了したら、法定相続人全員の戸籍謄本(現戸籍謄本)と附票(住所変更の履歴を記録したもの)を併せて取得しましょう。

法定相続人の戸籍謄本は、相続税の申告や、銀行等の名義変更、不動産相続登記等を行う際に、被相続人の戸籍謄本と共に必要になります。

謄本の取得例

被相続人に、配偶者と子A、子Bが居たが、子Bは既に亡くなっておりBの子(被相続人の孫)のCとDが居た場合…
配偶者と子A、孫C、孫Dが法定相続人になるので、配偶者と子A、孫C、孫Dの戸籍謄本(現戸籍謄本)を取得します。また、Bの死亡が確認できる除籍謄本も併せて取得します。

●戸籍謄本?戸籍抄本?
市区町村役場で、戸籍を取得する際「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の2つの種類がありますが「戸籍謄本」を取得するようにしましょう。
相続登記手続きでは、法定相続人を漏れなく把握できる資料を備える必要があるためです。
「戸籍謄本」が戸籍の全部(全員)の写しであるのに対し「戸籍抄本」は戸籍記載の個人(要は全員は記載されない)の写しであるためです。

ということで、今回は相続の発生から「2週間〜3ヵ月以内」に行うべき相続手続きのうち、法定相続人確定に必要となる書類を取得する具体的な方法についてのお話でした。

相続手続きについては、全体の流れを把握した中で手続きを進めていくことが大切です!

相続手続き全体の流れについては【慌てない相続手続き①】相続手続きの全体の流れを知る! 〜相続手続きを自分でやれるように準備しておこう〜をご参照ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ゆきまるでした。